白十字とハート
わかった!!
そうだ
「キャメラ」でお馴染みの、アッコさんのモノマネをしている Mr.シャチホコだ!!!
あ~、スッキリしたぁ。
私の今の主治医のK先生が、誰かに似ているなぁ~
と思っていたが、今日テレビを観ていて思い出した。
Mr.シャチホコが真似するミスチルの桜井さんに似てるんだ!!
ホント、そっくり!!
こんにちは 胸のつかえが取れてスッキリの、
リ・ハビリスです!
一昨日はリハビリに行き、
昨日は検査に行って来た。
自動受付機で受け付けを済ませ、エスカレーターに乗った際、
目の前で揺れている「赤の中に白十字と白いハート」が描かれたカードに目が留まった。
それは50代と思しき男性のカバンにぶら下がっていた。
そして私はあの日に思いを馳せた。
あれは2020年の夏
猛暑の中私は自転車を走らせていた。
繁華街の商業施設の周りは人でいっぱいだ。
もう夏休みだから若い子が多いな…などと思いながら、赤信号で止まった。
「あっつぅ~」と周りを一回り見渡すと、左斜め後方に男性発見。
こんなに暑いのに、彼は炎天下のコンクリートの上で大の字になって寝ている。
ん? 酔っ払いか??
大通りと大通りの間の路地裏だが、普通に人々が行き交っている場所だ。
顔を戻し正面に向き直したが、やはりどうにも気になる。
なぜあの人はあそこに寝ているのか。
まさか倒れているんじゃ…
いや、だけど
そのすぐ脇を人々は気にする様子も無く歩いている。
どうにもこうにも気になって来た。
寝ている男性の横の車道を通り、信号待ちの為に私の隣に並んだサラリーマン。
思い切って声を掛けてみた。
「あの人って、酔っ払いですかね?」
『いやぁ~どうなんでしょうねぇ』
情報は得られない。
ダメだ。気になってしょうがない。
よくよく見たら、たぶん男性が着けていたと思われるヘッドフォンが、2m程離れた所に落ちている。
やはりこれはおかしい。
タダ事じゃないと確信した私は、男性の所に向かった。
信号は青に変わったが、さっき声を掛けたサラリーマンのおじさんも一緒に来てくれた。
男性の顔を覗き込むと、目を瞑り顔からも体からも大量の汗が噴き出していた。
「大丈夫ですか?」
声を掛けてみたが反応が無い。
これはヤバイ。
冷凍庫から取り出し、持参していたペットボトルを男性の首元に当てる。
「ひとまず日陰に運びましょう!」
だが、体格の良いその男性は、なかなか2人の力では動かせない。
咄嗟に
「すみませ~ん、手を貸してくださ~い」
思わずそう叫ぶと、2~3人の女性が来てくれた。
彼女達も事を理解し、力を貸してくれた。
異変を感じた他の通行人も集まって来た。
タオルで煽ったり、目の前にある有名コーヒー店から氷を貰って来てくれたり…
スマホを忘れた私はおじさんに救急車の要請をお願いした。
幼少期には「おんな番長」と呼ばれていた私。
仕切る事は得意だ。
皆の介抱が続けられる中、男性が意識を取り戻し始めた。
『~、~』
言葉になってはいないが、何かを話している。
汗を拭き、身体を冷やし、声を掛け続ける。
『バッ…バッう』
ん??
『バッう・・・』
あ、バッグか!
「バッグですか?」
聞き返すと男性は頷いた。
『な・・っか、なっか』
「中ですね!? 失礼しますね」
中を開いてみると、赤地に白十字と白いハートのマークが印刷されたカードが取っ手に着けられていた。
カードには、
男性の名前、年齢、血液型などの個人情報
そして
「突然意識を無くし、倒れる事があります。その時は、こちらに連絡してください。」というメッセージと共に、携帯の番号が書かれていた。
衝撃で、私に発する言葉は無い。
カードを見ている間に救急車が到着したので、救急隊員の方にカードを差し出し連絡をお願いした。
その夜家に帰るとすぐにあのカードを調べてみた。
『ヘルプカード』と言うらしい。
私はその存在すら知らなかった。
そして他にもいろいろな福祉カードが世の中にはあるらしい事を知った。
だが
せっかくそんなカードがあっても、認知されていなければ意味を成さない。
あの時 もし私がカードの存在を知っていれば、もっとスムーズに対処出来たのかもしれない。
調べなければ分からないのでは無く、
日常の中で自然に入って来る様な情報発信は出来ないものか…
とりあえず
このブログでヘルプカードの存在を知った皆さんには、直ぐに「ヘルプカード」を調べていただきたい。
そして
この際だからもう一つこんな話しを・・・
2022年、今年の7月のある夜
夫の運転する車で家に向かっている途中、大きな川に架かった橋の手前で前の車が止まった。
その前を見てみると、ずっと先まで渋滞している。
ん?
こんな所でこんな時間に渋滞?
チョロっと進んでは止まり、またチョロっと進んでは止まり…を数回繰り返し、その原因が分かった。
この長い橋の車道を、一人のおばあさんが歩いていたのだ。
対向車線の車の合間を縫って、一台一台おばあさんを抜かして行く。
「おばあさん、危ないなぁ」と言いながら、夫がおばあさんを抜かした瞬間、私はつい「止めて!」と叫んだ。
後部座席に座っていた為直ぐには気付かなかったが、
おばあさんの後ろ姿に異変を発見した。
お漏らしをしているようだ。
そうか…
認知症を患っているのかもしれない。
橋を渡り終えて直ぐの待避スペースに車を停めると、橋のたもとまで歩き、おばあさんの様子をうかがってみた。
あと100mちょっとくらいかな…
あれ、おばあさんが立ち止まり、身を乗り出して橋の下を覗いている。
まさか、飛び降りるつもりじゃないよね…
私は歩道を歩き、おばあさんの位置まで行くと、車道を歩くおばあさんの様子をうかがいながら並行して歩いた。
なんとか橋を渡り切り、おばあさんを保護した。
110番通報した後、おばあさんとお喋りをしながらパトカーの到着を待った。
杖に名前が書いてある。
確認すると、おばあさんの名前だった。
綺麗な名前。
『うちから歩いて来て、今から電車に乗る』と言っていた。
だけど『お金も持っていないし駅も分からなくなっちゃった』とも。
おばあさんが教えてくれた家の住所は、とてもここまで歩いて来れる場所では無かった。
以前何かの雑誌で
認知症になると、近い記憶は薄れ、昔の記憶が蘇って来る
と読んだ事がある。
きっとおばあさんの記憶は、過去に戻っているのだろう。
その住所は、嫁ぐ前に暮らしていた家なのかもね。
もしかしたら、おばあさんは今、私より年若く戻っているのかな…。
なんだか可愛いな。
私がおばあさんとお喋りしている間、高校生くらいの娘を連れた女性が車を横付けた。
この女性もおばあさんを気にして停まってくれたようだ。
何十台も走り抜けた車の中で、停まったのはわずかに二台。
悲しい世の中だね。
そして
しばらくして駆けつけたパトカーに、おばあさんは乗せられて行った。